あわじ国

最悪だ。

今すぐ、ここから逃げ出して、一刻も早く家に帰りたい。

俺は泣くタイプではないが、それでも泣きそうなほど追い詰められている。

というのも、俺は今、

川上課長とふたりっきりでトレーラーハウスに泊まっている。

本当は喜田課長と行く予定だったのが、今週はずっと別業務で不在らしい。

喜田課長とでも、男ふたりでトレーラーハウスに泊まるのは微妙なんだが、

川上ジジイとなると、微妙どころの話ではない。

ログハウスでもない、ホテルでもない、キャンピングカーのような

トレーラーハウスに泊まれるなんて、ふだんなら興奮するのに、

こうして日記を書いているあいだも、川上課長は「独立反対…絶対アカン」と

ひとりでぶつぶつ、つぶやいている。

完全に、危ない人だ。

トレーラーハウスと聞くと、スペースも窮屈なイメージがあったけど、

キッチンにシャワー、トイレ、ベッド、ソファがあってかなり快適だ。

ここにずっと住むこともできそうなくらい、設備が整っている。

今日の夕食は、俺がカツ丼をつくった。

そしたら、川上課長の機嫌も少しだけよくなってパクパク食べてたな。

「反対派が勝つ」ための願掛けとでも思ったのだろうか。

川上課長は、熱心に独立反対運動をしていたからな。

噂によると、国会議事堂の前でも演説をしたとか、しなかったとか。

その時に確保されていたら、今みたいな状況には陥っていなかっただろうな。

そういえば、先週末で投票は終わったはずだけど、

結果はどうなっているんだろうか。

来週の月曜日に発表らしいけど、

俺はこれからも広報大臣をやっていかなきゃならないんだろうか…。

とりあえず、これが書き終わったら外に出て星でも見てみよう。

そしたら、気分もすこしは落ち着きそうだ。